2017.08.1
ZEROへの道程 ー前夜ー
四月一日 自由の身最後
いよいよ明日になってしまった。
自由の身最後の夜だ。
これが明けてしまえば、もう休むことなく死ぬまで働らかないといけなくなるのだ。
次に自由の身になるのはもう年寄りになってからなのだ。
西尾さんがようやくつかまった。
西尾さんはまた一段と年をとってしまって弱っているのがわかった。おばさんが死ん
だ時年をとったなと思ったが今回はもう老人のようだった。自分で自分のことを廃人
だなんて言っていたけど悲しいものだ。
あの天真爛漫で大酒飲みの西尾さんは見る影もない。時代は移りゆくものだ。
人間仕事をやめてしまうとあんなに惨めなものなのか。これから死ぬまで何を楽しみ
に生きていくのだろうか。
西尾さんが年をとりはじめたのは、おばさんが死んでからだ。いい夫婦だっただけに、
そのショックは大きかったのだろう。
おれもいつかああなる日がくるかも。
明日はその第一歩。
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1990年4月1日 みすず工業入社前夜の日記 原文まま
おもいきり後ろ向きな日記である。
こんな心構えで入社した新入社員が、どんな仕事ぶりだったのかは容易に想像がつく。
ZEROへの道程 エピソード4 就職編
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